Foot characteristics of the daily-life gait in postmenopausal females with distal radius fractures: a cross -sectional study

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【ポイント】

  • ドミノ骨折の始めの骨折として生じることの多い橈骨遠位端骨折患者の病院外での日常生活内の歩行を靴内慣性センサを用いて計測しました。
  • 橈骨遠位端骨折患者は健常者と比較し、遊脚期における足の背屈角度と底屈角度が有意に小さいことがわかりました。
  • 遊脚期の足部の底背屈角度の合計が99度未満で脆弱性骨折のリスクが高いことが明らかになり、今後、日常生活歩行から転倒や骨折を予測予防する上で有用と考えます。

【背景】

近年のウェアラブルデバイスの発達により、実際に骨折が生じる日常生活内の詳細な評価が可能となってきました。歩行解析においても、施設内歩行と日常生活内の歩行が異なるといった報告は多く認められており、日常生活内の歩行を解析する意義を感じておりました。我々は以前に報告したNEC社の開発した靴内慣性センサ(A-RROWG)を用いて、骨折患者の日常生活内の歩行を解析することが、骨折や転倒につながるリスクの予測や予防につながると考えました。

【概要】

歩行能力の低下は高齢者における転倒リスクを増加させ、その一部は医学的な介入や日常生活動作の制限を要する傷害につながります。橈骨遠位端骨折は、閉経後女性における初発の脆弱性骨折として最多を占め、その後の骨折リスクが増加することが知られています。近年、慣性センサの登場により無意識下の日常生活歩行の評価が容易に行えるようになりましたが、骨折リスクと関連する日常歩行の特徴に関してはほとんど知られていません。そこで本研究では転倒および骨折のリスクに関連する日常生活中の歩行の特性を評価することを目的とし、橈骨遠位端骨折患者の日常生活内の歩行を評価しました。  初発の脆弱性骨折として橈骨遠位端骨折患者を受傷した閉経後女性27名(骨折群)と脆弱性骨折の既往のない女性28名(健常群)を対象とし、参加者各々の靴に慣性センサを装着したインソールを挿入して数週間の無意識下の歩行を計測し、8つの歩行パラメーターとそれぞれの変動係数(ばらつき)を算出しました。  計測の結果、骨折群では遊脚期における足の背屈角度と底屈角度が有意に低値でありました。遊脚期の足部の底背屈角度からReceiver Operating Characteristic(ROC)曲線※1を作成すると、合計99度未満が骨折リスクであることが明らかになりました。

※1 ROC曲線:縦軸に感度、横軸に偽陽性率 (1.0 – 特異度) を取ったときのグラフとして描かれたもので検査や診断の性能などを二次元のグラフで示したものです。カットオフ値や精度を求める際に使用します。

【今後の展望】

本研究では、無意識下に日常生活内の歩行を解析することで骨折患者の足部の特徴を可視化することができました。本結果より遊脚期の足部底背屈角度の低さは骨折リスクと関連している可能性が示唆されます。日常生活歩行から転倒・骨折を予測するための第一歩となることが期待され、今後の骨折の予防に繋げていければと考えております。

【論文情報】

掲載誌:BMC Musculoskeletal Disorders

論文タイトル:Foot characteristics of the daily-life gait in postmenopausal females with distal radius fractures: a cross-sectional study

DOI:10.1186/s12891-023-06845-5

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